ある探偵の一日
1日1案件とは限らない。朝、昼、夜を問わず、探偵は街を駆ける!眠気と空腹に耐えながら、獲物を狙う猟犬のごとく…。これは、探偵の視点から現場の真実を語ったドキュメンタリー・ルポである!
走っている!
ターゲットが夜中に全力疾走。終電がギリギリなのだ。
周りの人たちも駅まで一目散。おかげで目立つことはない。ターゲットに続いて電車に駆け込む。この様子では昨日と同じようにまっすぐ帰宅ということになるだろうな…。今日は愛人に会わないのか。そんなことを思いながら、窓に映った男の横顔を盗み見る。混みあった車内でうつむき加減でいる男。携帯を見るわけでもなく、疲れた表情で目を軽く閉じている。その顔を見ると尻尾を掴めない苛立ちがこみ上げてくる。しかしまだ調査2日目。焦ることはない。
電車が停まり、ターゲットが降りる。少し間をあけてか下車し、追尾する。結局自宅へ。依頼人とスタッフに連絡を入れる。調査解除だ。が、都内に戻る電車はすでにない。付近には店もなく、迎えが来るまで一休み。苦い徒労感を味わいながら、公園のベンチに腰を降ろした…。
迎えのスタッフが到着。
お疲れ様の言葉もそこそこに、次なるミッションを告げるメールが入った。
”渋谷の現場に動きあり”。
つまり、サポート参加せよという意味だ。「了解しました…」。心なしか力のない返信。スタッフの運転で一路、道玄坂のとあるラブホテルへ。現地到着。
こちらの案件は、不倫カップルの証拠収集が目的だ。向こうが楽しいことをしてる最中に、こっちはむさ苦しい車内でコンビニ弁当を食っている。ホテルの出入り口は2箇所。カップルは車でホテルに入ったため、いつ出るかが読めない状況。先行組と合流し、もう片方の出口を張り込む。
眠気も峠を越えたころ、ターゲットがチェックアウトしたとの連絡が!
先行組が張り込んでいた方の出入り口から出たようだ。せっかく、カメラを構えて待っていたのに残念。先行組が証拠映像は押さえたから問題はないのだが、自分がゲットしたかったと強く感じてしまう。
最近、猟犬化しているような気がするなあ…。
ようやく事務所に戻る。まだ仕事は終わらない。
昨日買ったおにぎり片手に、昨日と今朝のビデオ映像をパソコンに落とし、報告書の作成に取り掛かる。さすがに眠い。報告書作成中にも依頼人からのメールは入る。虚ろになりながらも、すぐに返信。眠気も2回目の峠を迎えつつあった。
ふと気付くと、ソファーで横になっていた…。
もうこんな時間だ!昨日の現場へと移動する。調査3日目。今日は動いてくれよ。現場に出ると力が甦ってくるから不思議だ。そして、ターゲットが出てくるのを息を殺して待ち構える。獲物を狙う猟犬のごとく…。